イチローさんの初動負荷トレーニングの図解。公民館などに2台の初動負荷マシンを。(page2)

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(1)Abstract

(2)Introduction

* * * * *

(3)初動負荷の定義

(3)-1 定義文

(3)-2 追加の解釈

(3)-3 用語説明

* * * * *

(4)初動負荷の解説

(5)初動負荷理論のメリット・デメリット

(6)初動負荷理論の拡散の提案

(7)conclusion

(3)初動負荷の定義

初動負荷理論について初めての人は いきなり文章での理解は難儀だと思いますので、次の(3)-1項および(3)-2項は一度飛ばして(3)-3項以降をまず読んでいただき、その後再確認いただければと思います。

(3)-1 定義文

(株)ワールドウィングエンタープライズ社のウェブサイトより。

【 反射の起こるポジションへの身体変化及び、それに伴う重心位置変化等を利用し、主働筋の「弛緩―伸張―短縮」の一連動作を促進させると共に、その拮抗筋ならびに拮抗的に作用する筋の共縮を防ぎながら行う運動 】

サイト上で「1995年に 定義した」とありますが、1980年代から小山裕史氏は初動負荷理論の書籍を発行されています。

さらに、力とスピードの積である「パワー」に対する 初動負荷トレーニングの有効性を、次のように述べられています。

【 初動負荷トレーニングでの筋の収縮様式を説明しますと、先ず最初は筋を弛緩させて短くした状態から始まります。
そこに負荷が掛りますと筋は伸張性収縮によって力を出していくことになります。
張力が最大となったところで素早く短縮性収縮に切り換えますが、そのとき負荷が適切に減少(漸減)されれば収縮速度は加速し、パワーの増大が期待されます。 】

(3)-2 追加の解釈

上記の定義に加えて、私は以下のように解釈します。

●初動負荷理論で定義する「(伸張)反射」は、脊髄反射と比べて 少しスピードが遅めの反射を含む。
●初動負荷理論とは、反射の起こるポジションの「初動(初動フェーズ)」に加えて、その前後の期間も含めた負荷や動作改善の考えであり、その名称のままの初動フェーズだけが対象ではない。
●take back 動作を含む運動を中心に初動負荷理論が展開されていると感じますが、take back を伴わない運動にも初動負荷トレーニングが有効。

これらの追加の解釈と補足については後述します。

(3)-3 用語説明

筋骨格系についての専門用語に熟知されている人は、本項は飛ばしてください。

以下の 筋肉や関節の状態を表す用語と、前述定義に用いられている用語につき簡単に解説します。

「屈曲・伸展」
「短縮・伸張」
「自然長(しぜんちょう)」
「収縮・弛緩」
「反射」
「主働筋・拮抗筋・共縮(しゅどうきん・きっこうきん・きょうしゅく)」

上記の用語以外にも 本投稿で専門用語を用いていますが、それらについては 専門の書籍・サイトなどを参照願います。

① 屈曲(flexion)・伸展(extension)

関節の動きや運動方向を表す用語です。
関節の動きに伴なって筋肉も動きますが、筋肉の状態を表す言葉ではありません。

② 短縮・伸張

筋肉の長さの変化・状態を表します。

③ 収縮(contract)・弛緩(relax)

「収縮」…筋肉へ神経伝達物質が印加されて 興奮状態(excitation)となり、張力が発生している状態を表します。

「弛緩」…「収縮」の反対で 興奮状態ではありません。 ただ、運動中に 完全に弛緩・脱力したとすると関節が不安定になるので、弛緩といっても 最低限の弾性を下回ることはないと考えます。

また、誤解されやすいこととして、「収縮=短縮」ではない場合があり、収縮状態でも 筋肉の長さによって以下の場合があります。

●伸張性収縮 (eccentric contraction)
筋肉に力が入って張力が発生しているけれども、長さが伸びていくという状態。
登山などで、下る動作の後に 太ももの前面が筋肉痛になったりするのは、この動作の影響です。

●短縮性収縮 (concentric contraction)
「収縮=短縮」となるケースで、筋肉に力が入りつつ 長さが短くなっていくという状態。

●等尺性収縮 (isometric contraction)
筋肉に力が入って張力が発生しているけれども、筋肉の長さが変わらない状態。
アイソメトリック・トレーニングのように、静止して 力を入れて行なう動作です。

④ 反射

◆ 概要

ヒトの「反射」は様々あり、「体性反射」「内臓反射」などの分類もありますが、ここでの反射は 体性反射の中の「伸張反射」を指します(以降 単純に「反射」と表記します)。

「反射」のイメージを掴む例としては、膝蓋腱反射 knee-jerk reflex を用いた腱反射テストがあります。

膝蓋腱反射テスト 初動負荷トレーニング 兵庫県宝塚市 かみたに接骨院 整骨院

脚気(かっけ)という病気などの疑いがある場合、図のように膝の皿の下のあたりにある「膝蓋腱」をハンマーで叩くテストが 医療機関で行われます。

正常であれば、叩かれたら 爪先が少しピョコンと前に 無意識に動きます。

◆ 動作メカニズム
膝蓋腱反射テスト 動作メカニズム 初動負荷トレーニング 兵庫県宝塚市 かみたに接骨院 整骨院
◆ 脊髄反射(生理的反射)と初動負荷の反射

上記の脊髄反射(生理的反射)と、初動負荷の定義でいう反射とは若干異なると感じます。

なぜなら、次の相違点があると思うからです。

●脊髄反射 … 瞬時 かつ 不随意に起こる反射。脳からの高次のコントロールではなく 脊髄レベルの反応。

●初動負荷の反射 … 反応時間が比較的長く、かつ 巧緻運動学習(例…投球フォームの鍛練)のような、脊髄より高次の 随意コントロールも関与する可能性もある。

本投稿では、これらの反射の多少の相違は無視して 論を進めます。

ちなみに、腱反射の他の例としては、マサイ族の跳躍運動や、陸上競技 短距離走のトレーニングなどで採り入れられている plyometric exercise / SSC(stretch shortening cycle) [後述]などがあります。

⑤ 主働筋・拮抗筋・共縮

用語説明に使う例として、腕(上腕)に力こぶを作る動作を挙げます。

◆ 主働筋と拮抗筋
相反神経支配 共縮 主働筋 拮抗筋 初動負荷トレーニング 兵庫県宝塚市 かみたに接骨院 整骨院

この動作の際 いくつかの筋肉が作用しますが、主に働く「上腕二頭筋」と「上腕三頭筋」という 2つの筋肉に着目した 相反神経支配を考えます。

肘関節が伸びた状態から 力こぶを作る動作をスムーズに行うためには、上腕二頭筋が短縮性収縮する際、上腕三頭筋は弛緩・伸張しなければなりません。

力こぶを作る動作において、上腕二頭筋を「主働筋」、上腕三頭筋を「拮抗筋」と呼びます。

◆ 共縮

本動作において、もし 上腕三頭筋が弛緩・伸張しなければ、肘を支点として逆方向に拮抗する力が作用するので、動作の妨げとなります。

そして、この双方の筋肉が同時に収縮することを「共縮」といいます。

ただ、意識的に共縮状態を作る運動もあるので、全ての共縮が異常や不調ではありません。

共縮の例としては、脳性マヒ患者の ぎこちない動作に見られます。

共縮のメカニズムなどは再度後述します。

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