目次
(3)-1 大学時代からの変化点
(3)-2 体幹が少し前傾に
(3)-3 地面を蹴る力の水平成分を大きくする(接地が爪先寄りに)
(3)-4 腕の後方への振りをより大きくする / 腕・肩の動作の変化 / 肩周辺(三角筋)が発達し大きくなった(?)
(3)-5 体幹を起こす動作(ピッチング動作)をする
(1)まえがき
鈴木優花 選手(第一生命グループ)、MGC:マラソングランドチャンピオンシップ 2023を制して、パリオリンピック代表内定〜
おめでとうございま〜す🎉🎊🏅㊗️
いやぁ〜嬉しいですねぇ〜
2018年末、大学一年の時の 区間新記録の走りから鮮烈でしたぁ〜
鈴木選手がオリンピックで躍動されることを切に願って、ランニングフォーム等について考察します。
(2)結果概要
僭越ながら(汗💦)考察した結果概要を述べます 。
🔴 体幹が前傾 + 接地が爪先寄り
鈴木選手の大学時代と比較すると、より洗練されたランニングフォーム(体幹が少し前傾 + 接地が爪先寄り)に進化していて 素晴らしい。
🔴 腕・肩の動きと体幹のピッチング動作
MGC 2023のフォームにおいて、肘の角度が疑問です。
肘は あまり曲げ過ぎないで、大学時代のより大きな腕振りや肩の動きに戻して、その分 体幹のピッチング動作をより小さくした方が良いと思う。
(※「ピッチング」「ピッチ方向」「pitch」に等ついては、次のブログをご参照ください)
🔴 大腿の発達(?)
大学時代と比べて大腿周囲が大きくなり、長距離走には少し不利に感じますが、オリンピックまでに仕上げるのか、不利をもろともせず躍動するのか、楽しみですッ!
(3)内容
(3)-1 大学時代からの変化点
大学卒業されてから1年半が経過し、下記のフォーム等の変化が見られます。
🔴 体幹が少し前傾に
🔴 接地が爪先寄りに
🔴 腕・肩の動作の変化
🔴 肩周辺(三角筋)・大腿周囲が発達し 大きくなった(?)
以下に それぞれについて説明します。
(3)-2 体幹が少し前傾に
大学時代と比較して 体幹が少し前傾しています。
上半身に加わる重力を考えると、前傾することにより、身体重心(丹田?)に対するモーメントアームが大きくなります。
前回りに倒れる方向(+ピッチ方向)の回転モーメントが大きくなるので、それに対抗しなければなりません。【.運動量保存の法則 】
その対抗策として以下があります。
🔴 地面を蹴る力の水平成分を大きくする(接地が爪先寄りに)
🔴 腕の後方への振りをより大きくする
🔴 体幹を起こす動作(ピッチング動作)をする
[*追記]
別な対抗策として 以下があるが、接地を爪先寄りにするフォーム変更を優先したか、ストライドをあまり変えたくなかったかもしれませんね。
🔴 前方への脚のSwingを大きくする
(3)-3 地面を蹴る力の水平成分を大きくする(接地が爪先寄りに)
Swing Phase での大腿の最大振り出し角度を小さくし(特に右側)、それに伴って 接地時の下腿の角度も改善され、その結果 接地が さらに爪先寄りになり、当該水平成分の増大につながっています。
(3)-4 腕の後方への振りをより大きくする / 腕・肩の動作の変化 / 肩周辺(三角筋)が発達し大きくなった(?)
肘の角度を変えたり、動作範囲を大きくすることにより、上肢のモメンタムが増大し、体幹前傾の対抗策となりますが、実は大学時代に そうなっていました。
MGC2023では、肘を曲げて 角度をほぼ固定した、コンパクトな肢位での腕振りをされていましたが、大学時代は腕振りに応じて 肘を屈曲・伸展させていた。
ただ、鈴木優花選手も レース中 時折 腕をダランと垂らしています。
マラソン終盤には、肩周辺の筋が硬化・疲労し、循環不良・神経伝達不良が起こって 腕のシビレが出る人がいます。
↓以前のブログにも書きましたが、このような症状に対しては 腋窩神経(QLSS :Quadrilateral Space Syndrome)の影響が大きいので、それに対するコンディショニングが重要です。
鈴木選手の肩周辺(三角筋)が発達し大きくなったような感じもありますので、腕振りを含めたフォームの試行錯誤をされているかもしれませんね。
(3)-5 体幹を起こす動作(ピッチング動作)をする
(3)-5-1 ムダなピッチング動作
そもそも、マラソンにおいて ピッチング動作はムダだと思います。
ピッチング動作は、腰椎・胸椎を反らしたり元に戻したり(伸展・屈曲)、股関節を過度に伸展・屈曲する動作であり、マラソンの場合 それを何万回と繰り返します。
しかも、身体重心から一番 遠く離れた位置にあり(モーメントアーム:大)、かつ 質量も大きな「頭部」を前後・上下に振りますので、かなりのエネルギー消費です。
想像してみてください。
ピッチング動作と同じような背筋トレを、2時間休まず 何万回と繰り返した後の身体の状態を。
前述の 腕振りで腕のシビレが発生するメカニズムと同様に、ピッチング動作により脊椎周囲の筋が硬化・疲労し、以下の悪影響が危惧されます。
🔴 下肢のパフォーマンス低下(∵下肢の筋は腰髄の神経支配)。
🔴 肺呼吸のパフォーマンス低下(∵肋骨の呼吸筋は胸髄の神経支配)
🔴 股関節周辺の傷害
(3)-5-2 アスリートのピッチング動作例
各選手を比べると、
一山 < Kipchoge < Kiptum = 鈴木 < 不破
一山麻緒選手のピッチング動作(角度)が最小で、不破選手が最大です。
不破選手は、坐骨・股関節・右アキレス腱の不調がニュースになっていましたが、SNS・ブログにも書きましたように 右股関節周辺に負担のかかるフォームでした。
また、MGC2023での一山選手を見ると、肩幅が大きくなったように感じるので、肩・腕周りを含めて フォームを強化された成果なのかもしれません。
ただ、一山選手のランニング中やゴール後の 骨盤前傾・反り腰 姿勢は問題だと考えますので、また 別途ブログにまとめます。
[*追記]
↓ 一山選手以外のアスリートを含めて ブログにまとめました ↓
(3)-5-3 ピッチング動作のメリットと妥協点
ピッチング動作により 下肢の伸展反射等を誘起する効果はあると思います。
しかし、過度なピッチング動作は、メリットよりも前述のデメリットの方が大きいと考えます。
よって、各アスリートの特性に合わせたバランスが肝要だと思います。
例えば、腕振り・水平ツイスト・股関節等の筋力や耐性が十分ではない人は、それを補なう 胸椎・腰椎のピッチング動作を少し許容する。など。
(このあたりの「負荷分散」については また別途ブログにまとめます)
(3)-5-4 圧巻の上り坂のフォーム
鈴木選手が圧巻だったのは、MGCコースの終盤 37〜41km付近にかけて続く上り坂のエネルギッシュな動作です。
フラットを走るフォームと比較すると ピッチング動作が小さく、MGCのこの坂道にチューニングしたかのような安定度です。 しかも これが終盤の37kmからの動作なのです。
(4)提案
🔴 上り坂では
MGC2023のフォームで、勢い そのまま伸びていって欲しいですね。
パリオリンピックのコースは、MGCより 高低差が大きいようですので、ドラマが生まれるかも、ですね。
🔴 平地では
前述のように、肘は あまり曲げ過ぎないで、大学時代の より大きな腕振りや肩の動きに戻して、その分 体幹のピッチング動作をより小さくした方が良いと思う。
あくまでも 前後の腕振りであり、水平ツイストまで大きくならないよう 注意ですが。
🔴 腕のシビレのケア
鈴木選手のフォームは、少し肩の高さが少し挙上した「いかり肩」ですので、前述のような腕のシビレが出やすいのかもしれません。
適切にコンディショニングすれば シビレを抑えることができますので、実行されて、ダイナミックな腕振りをして欲しいですね。
(5)おわりに
MGC2023 優勝インタビューは、元大学キャプテンらしく堂々とされていて 素晴らしかった。
「(レース中盤 先頭から離された展開について)自分のリズムでいけば いける っていう自信があった」
「最後はいける自信がありました」
と。
みなぎる自信を感じました。
また、下記のブログで述べました経年変化のパラメータ(Rolling、下腿変形、内がえし・回内、Toe-out)は、MGC段階でも ほぼ問題なく、稀有な存在だと思います。
パリオリンピック、鈴木優花選手に熱烈期待しまッす!
頑張ってください〜🇯🇵
コメント