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* * * * *→ (6)-1 エリウド・キプチョゲ(Eliud Kipchoge)選手
→ (7)おわりに
(5)なぜ細かいフォームに着目するのか
なぜ 前述のようなフォームの細かい点を述べたのか、その理由を以下に示します。
トップランナーになるための要素として下図のような3つがあると思います。

現在、マラソンの世界記録はキプチョゲ(Kipchoge)選手が 2時間1分台であり、そして 世界十傑に入るためには 2時間3分36秒を切る必要があります。
上図の三拍子 全てを高めていかないと Top10 レベルに届かないでしょう。
◆「身体特性」「メンタル・経験」について
ここでいう「身体特性」とは、体脂肪率・筋量などの骨格特性、最大酸素摂取量 VO2max などの心肺能力、エネルギー代謝特性などを想定しています。
「身体特性」を高めるためには、高地トレーニングや各種トレーニング技術、栄養学などが適用できるでしょう。
「メンタル・経験」を高めるためには、メンタルトレーニング、カウンセリングなどが想定できます。
◆「フォーム」について
そして、「フォーム」については、現代は情報社会なので 様々な知識が得られます。 フォアフット走法や体幹のストレングスや姿勢など、多岐にわたる知識が手に入ります。
それに加えて、前述の ムダな横方向(前額面)の動作や神経伝達不良を取り除いて、より最適化したフォームでないと アフリカ勢の身体特性の優位性に太刀打ちできないと思います。
走行は 身体を前方へ効率的に移動させる運動ですから。
◆ 常識にとらわれない青山学院大学駅伝部トレーニング
青山学院大学駅伝部の原晋 監督も、次の記事によると「腕立ても腹筋もしない」という従来の常識にとらわれない お考えで、ランナーの成熟化を目指しておられます。 細やかな ひとつひとつの大事さを感じておられると思います。
箱根駅伝の連覇を実現させた“腕立ても腹筋もしない”トレーニングとは。
Facebook navi (フェイスブックナビ)さんの投稿 2016年4月16日土曜日
(6)注目する選手
(6)-1 エリウド・キプチョゲ(Eliud Kipchoge)選手


◆ Core Stability … △(Rolling 少し)
◆ 下腿骨の湾曲変形 … 〇(無し)
◆ 内がえし・回内 … △(右足の内がえし少し。 左足の回内少し)
◆ toe-out … △(両足。ただし 独特の骨盤ツイストをされているので 膝関節自体の外旋は少なめか)
◆ 股関節伸展 … 〇
恐れながら申し上げますと 100点満点ではありません(汗っ)。
ただ、この INEOS 1:59 では、やや前傾で かつ ブレの無い安定した体幹と、緩急を効かせた 素晴らしい脚運びが、△のマイナス分を上回っているのでしょう。
◆ キプチョゲ選手にも経年変化(?) → キプチョゲ選手の空力対策(?)[*2023年修正]
また、旭化成 村山謙太選手が、先日2020年2月のレースで キプチョゲ風のテーピングをされたとのことです。
(※ブログ用投稿) https://www.sponichi.co.jp/sports/news/2020/02/10/kiji/20200210s00056000089000c.html?amp=1
宝塚市 かみたに接骨院(整骨院)さんの投稿 2020年2月28日金曜日
下腿の外側にあることから、「内がえし・回内」をコントロールするテーピングのように見えます。
深読みすると、キプチョゲ選手の足関節にも経年変化が起こっているのかもしれません。
↓
[*2023年 追記]
間違ってました💦。
キプチョゲ選手のテーピングは NIKE社のAero Bladesシリーズ製品と思われます。
そして、村山謙太選手が それを真似ていると思っているならば、残念ながら間違ってます(失礼ながら、Aero Bldesと同様の空力特性を得られるテーピングには見えない)。

◆ 経年変化しないキプチョゲ選手[*追記]
(6)-2 鈴木優花選手 大東文化大学


◆ Core Stability … 〇
◆ 下腿骨の湾曲変形 … 〇
◆ 内がえし・回内 … 〇(ほぼ無視できる)
◆ toe-out … 〇
◆ 股関節伸展 … 〇
そうなんです! 文句無しのフォームです。 私のイチオシの選手です。
◆ プリンセス駅伝2022 (2022年10月23日 追記)
◆ 名古屋ウィメンズマラソン2023 (2023年3月 追記)
(6)-3 金光由樹選手 東海大学


◆ Core Stability … 〇
◆ 下腿骨の湾曲変形 … 〇
◆ 内がえし・回内 … 〇(右側 わずかに内がえし)
◆ toe-out … 〇
◆ 股関節伸展 … 〇
金光由樹選手も素晴らしいです。
ただ、脚を蹴り上げて 膝を曲げた瞬間 膝が外側へ流れる(ぶん回し)ことから、股関節外転筋群が硬そう(特に右側)です。
(6)-4 不破聖衣来選手 拓殖大学(2021.12 追記)



◆ Core Stability … 〇(右側 わずかにブレ)
◆ 下腿骨の湾曲変形 … 〇
◆ 内がえし・回内 … 〇(右側 内がえしわずかに)
◆ toe-out … △(右側 少し)
◆ 股関節伸展 … 〇(右側 わずかに不足)
2021年、彗星の如く現れました〜!
ダイナミックなストライドが素晴らしいっ♪
右股関節・右腰・右骨盤が少し気がかりです。
◆ 日本学生個人選手権の結果 (2022年4月19日 追記)
◆ 日本学生陸上競技対校選手権大会(日本インカレ)の結果 (2022年9月9日 追記)
◆ 全日本大学女子駅伝 (2022年10月30日 追記)
(6)-5 星岳選手 コニカミノルタ(2022.2 追記)



◆ Core Stability … 〇
◆ 下腿骨の湾曲変形 … △(左側 少し)
◆ 内がえし・回内 … 〇
◆ toe-out … 〇(右側 わずかに)
◆ 股関節伸展 … △(少し不足)
このブログ追記の前日(2022年2月27日)、「大阪マラソン・びわ湖毎日マラソン統合大会」で優勝されました 星岳選手です。
タイムが出にくいと言われる大阪のコースで 好記録を出されました。
2位の山下一貴選手および3位の浦野雄平選手と比べると明瞭ですが、体幹が立っていて 安定しています。

ただ、骨盤が少し前傾しているので、Initial Swing (遊脚初期)で股関節伸展不足があり、今後 腰・骨盤・股関節あたりが気になります。
(6)-6 田中希実選手 豊田自動織機(2022.4 追記)
先日(2022年4月24日)の兵庫リレーカーニバルでのフォームが気になったので 投稿します。



◆ Core Stability … △(左側 少しブレ)
◆ 下腿骨の湾曲変形 … 〇
◆ 内がえし・回内 … △(両側 少し)
◆ toe-out … △(左側 少し)
◆ 股関節伸展 … △(両側 少し不足)
臀部・大腿部が筋力アップされたように お見受けしますが、このフォームだと 左側の腰・骨盤・下肢が気になります。
去年の東京オリンピックや、去年(2021年10月)のミドルディスタンスサーキット東京大会1000m(下図)と比較すると、腕の振り・体幹の動揺・膝の曲げ角度(脱力)が違います。

まっ、先日(2022年4月)の兵庫リレーカーニバルでは、1500mのすぐ後に10000mも出場されたのと、はたまた 雨模様だったのもあって、フォームを変えられたのかもしれませんね。
マラソンを視野に入れるならば、昨年のフォームがいいと思います。
◆ 木南記念800m棄権 (2022年5月1日 追記)
やはり 調子が悪かったようですが、右太ももなんですねぇ。 ハズレました〜
次に セイコーゴールデングランプリ陸上(2022年5月8日)が予定されているとのこと。
◆ 世界クロスカントリー選手権大会 (2023年2月 追記)
◆ Maurie Plant Meet Melbourne 2023(2023年2月 追記)
(6)-7 ドルーリー朱瑛里選手 (追記)
◆ Core Stability … △(toe-off後 少し脊椎を反る)
◆ 下腿骨の湾曲変形 … △(左側 少し)
◆ 内がえし・回内 … △(右側 内がえし少し、左側 回内少し)
◆ toe-out … ○(両側 わずかに)
◆ 股関節伸展 … ○
(6)-8 鈴木亜由子選手 日本郵便 (追記)
(7)おわりに
これまで述べた問題(下記)に対処する方法は、補強トレーニングや運動療法などが考えられますが、マンツーマンによる適確なストレッチや、mobilizationなどの手技を併用するのが より効果的だと考えます(手前味噌になりますが💦)。
● 外転筋群の硬化(骨変形・疲労骨折)
● 内がえし変形
● 回内動作
● toe-out変形
なぜならば、自身でやる補強トレーニングを例えると、カチカチに固定したスキーブーツを履いて 下肢のドリルをやっているのと似ているからです。 (いい例えが思いつかないです💦。 まず そのスキーブーツをはずすような 前段階の手技を施してからトレーニングをしないと効果が上がりにくい という意味です)
加えて、前述の「神経伝達の不良」を改善するためには、フォームローラー(ストレッチポール)などの器具を使ったセルフケアにも限界があります。
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大迫傑選手の著書に次のような記述があります。
中学1年で競技を始めて、すでに僕は14年も走り続けていて、自分では競技人生は終盤にかかってきていると感じています。正直に書くと、いつ足が壊れてもいいと思っているし、壊れたときは競技をやめようという気持ちで日々走っています。それはもしかしたら今年かもしれないし、来年かもしれない。そうなっても次の道はあるし、時間をかけて探していけばいい。
「まえがき」にて、女子マラソンの「記録が伸びずに引退」というケースの話を述べました。
練習を積み重ねることにより心肺能力や筋の特性などが向上するけれども、同時に この「壊れるかもしれない」と感じる経年変化があるから 伸び悩むんだと想像します。
女性アスリートの場合、ホルモン・バランスの乱れによる骨などの悪影響に対しては 別途 繊細なアプローチが必要ですが、それ以外の 本投稿で述べた経年変化は、男女共に 適切なコンディショニングで改善できるものです。
大迫傑選手が、昨年 Twitter を通じて 以下のように発信され、今 陸上界は盛り上がって来ました。
世界的アスリートが また誕生するのを待ち望んでいます。
◆ 追記 … Number 「マラソン成功の再現性が低い」 好タイムが続出しても日本男子マラソンが世界で勝てないのはなぜか? (2022年2月)
発表された記事にも、「再現性が低い(好記録を出し続けることができない)」理由として メンタル面が挙げられていたり、他方では 厚底シューズに依存した故障が報告されていますが、本投稿で述べている経年劣化も「再現性が低い」原因だと考えます。
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↓ 2019年 MGCでの大迫傑選手と設楽悠太選手の比較はこちらへ

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↓ 一般ランナーのフォーム・クリニックもしております。

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↓ ブログのバックナンバー(総括)はこちらへ
